遠くから聞える太鼓の音に誘われながら。
行き着いた場所は、深い森の中の古い神社。 祭神は木花咲耶姫命。
この日は神楽の奉納祭。
その境内には源頼朝手植えといわれるリョウメンヒノキがそびえ立つ。
県指定天然記念物。大きさでは県下一。
子供の頃、この神社に続く急な石段を、家族と一緒に足元に気をつけながら上ったっけ。。
この石段、急であったので、私はとても苦手だった。
父親はまだ幼い私を、ひょいっと抱き上げては神楽殿の舞台に上げてくれた。
日当たりもとてもよく、見晴らしも良かったような気がしたが・・・
周辺の木々も、大きく覆いかぶさるように成長し、日中でも薄暗い程だ。
また、何と言っても、これも長い年月の仕業か、地形も隆起して石段に歪がきていた。
ずっと変わらない思い出の場所、また、変わらない心のふるさとでもあったはずなのに
「ここ」 にも等しく、同じ時が流れて変わっていた。。
そんなことは当たり前なはずなのに、時の流れを目の当たりにして
少し感傷的になると共に、心に温かなものが流れた。
「大丈夫だ」
山の精霊の声が聞こえた。
2006.10.15